ヘラクレス・トゥクストラエンシスの特徴は?生息地・大きさ・値段・入手難易度を解説
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ヘラクレス・トゥクストラエンシスの特徴は?生息地・大きさ・値段・入手難易度を解説

ヘラクレスオオカブトの亜種の一覧で「トゥクストラエンシス」という長い名前を見かけて、どんな亜種なのか気になっていませんか?どんな姿で、どこに住んでいて、手に入るのかどうか、気になりますよね。

実は、トゥクストラエンシスはメキシコの火山の山地から見つかった小さなヘラクレスで、知られている個体がとても少ないうえに、「本当に独立した亜種なのか」という議論まである、少し特別な存在です。

この記事では、トゥクストラエンシスの名前の由来と生息地、見た目の特徴と大きさ、よく似たセプテントリオナリスとの違い、入手難易度と値段の記録までを解説します。読み終えるころには、この亜種がなぜ「謎の多いヘラクレス」と呼べるのかが分かるでしょう。

この記事のまとめ
  • トゥクストラエンシスは1993年に記載された、メキシコ南部ベラクルス州のトゥクストラス山地の亜種で、全亜種のなかでもっとも北に分布する
  • 大きさはオス62〜80mmの小型で、メスは知られていない。頭角は短く中央付近で曲がり、上翅は汚れたような黄色で黒紋が小さい
  • 2006年時点では記載に使われた2頭のオス以外に認められる個体が見られておらず、セプテントリオナリスと同じ亜種とみる説もある。当サイトの評価では希少度★5

ヘラクレス・トゥクストラエンシスとは

ヘラクレス・トゥクストラエンシス(学名:Dynastes hercules tuxtlaensis)は、ヘラクレスオオカブトの亜種の1つです。グアドループ島やドミニカ島に分布する原名亜種のヘラクレス・ヘラクレス(通称ヘラヘラ)とは別の、メキシコに分布する亜種として記載されました。

1993年に記載されたメキシコの亜種

日本語版Wikipediaによると、ヘラクレスオオカブトは2015年時点で13亜種に分類されています。全体の一覧はヘラクレスオオカブトの種類は13種類!それぞれの特徴や希少性の違いとはにまとめていて、トゥクストラエンシスは当サイトの種類の記事では13番目、最後に紹介している亜種です。

トゥクストラエンシスは、1993年にモロン(M. A. Morón)氏が、イタリアの昆虫学の学術誌に「メキシコのヘラクレスオオカブトの新亜種」として記載したものです(参考:GBIF)。基本データを表にまとめました(出典:Wikipedia「ヘラクレスオオカブト」・GBIF。希少度は当サイトの種類の記事の評価)。

項目内容
学名Dynastes hercules tuxtlaensis
記載Morón, 1993
分布メキシコ南部(ベラクルス州のロス・トゥクストラス、サンタ・マルタ山塊)
体長オス62〜80mm(資料によっては85mmの標本の記録もあります)/メスは未知
知られている個体記載に使われたオス2頭(2006年時点)
希少度★★★★★

メスがまだ知られていない点も、この亜種の大きな特徴です。オスの個体がわずかに知られているだけで、ヘラクレスのなかでもまだ分かっていないことの多い亜種だといえます。

名前の由来は産地ロス・トゥクストラス

トゥクストラエンシスという名前は、産地であるメキシコの「ロス・トゥクストラス(Los Tuxtlas)」に由来しています。つまり、産地の地名がそのまま亜種の名前になっているわけです。

ほかの亜種を見ても、エクアトリアヌスは産地の国名エクアドルに由来するなど、産地にちなんだ名前があります。よく似ていると言われるセプテントリオナリスは「北の」という意味なので、片方は方角、片方は地名から名前がついたことになります。

はると

「トゥクストラエンシス」は、何度読んでも舌をかみそうになる名前です笑 地名から来ていると分かると、少し覚えやすくなりますよね。

ヘラクレス・トゥクストラエンシスの生息地

トゥクストラエンシスがどんな場所に住んでいるのかを、地図をイメージしながら見ていきましょう。

メキシコ南部ベラクルス州のトゥクストラス山地

Wikipediaによると、トゥクストラエンシスが分布するのはメキシコ南部、ベラクルス州のロス・トゥクストラスとサンタ・マルタ山塊です。

このロス・トゥクストラスは、メキシコ湾の海岸沿いにある火山の山地です。英語版Wikipediaによると、主な山として、標高1,700mを超えるサンタ・マルタ山とサン・マルティン・トゥクストラ山の2つの火山があり、その上部の斜面は熱帯雨林に覆われています。西のメキシコ横断火山帯から約250km、南東の中米火山帯から約330km離れた、ぽつんと孤立した火山の集まりです(参考:Wikipedia「Sierra de los Tuxtlas」)。山地の沿岸や標高の高い部分は、1998年に設けられた生物圏保護区に含まれています(参考:Wikipedia「Los Tuxtlas Biosphere Reserve」)。

ヘラクレスオオカブトは熱帯雨林を生息域とするカブトムシですが、トゥクストラエンシスが見つかったのは、メキシコ湾のそばにある孤立した火山の山地です。この山地のどんな環境に住んでいるのかを示す資料は、ほとんど見当たりません。

全亜種でもっとも北に分布する亜種

ヘラクレスオオカブトは、メキシコからボリビアまで、中米から南米の中部にかけて分布しています。そのなかでトゥクストラエンシスは、全亜種のなかでもっとも北に分布する亜種とされています。ほかの亜種を含めた生息地の全体像は、ヘラクレスオオカブトの生息地を紹介した記事で見られます。

同じメキシコ南部には、セプテントリオナリスも分布しています。Wikipediaには、セプテントリオナリスの分布として、メキシコ南部のチアパス州やシエラ・ノルテ山脈から、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマ北部までが挙げられています。トゥクストラエンシスの産地のベラクルス州は、この一覧には入っていません。

はると

メキシコ湾のそばの火山の山地に、ヘラクレスの北限の亜種がいる。そう聞くだけで、行ってみたくなるロマンがあります!

ヘラクレス・トゥクストラエンシスの特徴

ここからは、見た目の特徴を角、上翅と体毛、大きさの順に見ていきます。

中央付近で曲がる短い頭角と細い胸角

Wikipediaによると、トゥクストラエンシスの頭角は短く、中央付近で湾曲し、先端の突起はやや湾曲しているとされています。長く伸びる頭角が多いヘラクレスのなかでは、こぢんまりとした角の形です。

胸角は、基部(付け根)が明らかに湾曲していて、突起は付け根の位置にあり、やや大きいとされています。胸角の表面の点刻(小さなくぼみ)は比較的粗いそうです。亜種ごとの比較表では、胸角の太さは「細い」、頭角の先端の突起は「なだらか」、頭角の基部の突起は「あり」と整理されています。

汚れた黄色の上翅と赤褐色の体毛

前翅(上翅)は「汚黄色」、つまりくすんだ、汚れたような黄色で、黒い紋は小さいとされています。

体の毛は赤褐色です。個人的には、黒紋の小さいくすんだ黄色の上翅に赤褐色の毛という組み合わせは、一度写真で見てみたいなと思わせる魅力があります。

大きさはオス62〜80mmの小型

大きさは、オスで62〜80mmとされ、メスは分かっていません(出典:Wikipedia「ヘラクレスオオカブト」)。

大きな亜種ではオスが150mmを超えるものもありますが、トゥクストラエンシスは80mm前後までの小型の亜種です。亜種ごとの比較表に載っているオスの最大値も80mmです。ヘラクレス全体の大きさについてはヘラクレスオオカブトの大きさの記事でまとめています。

なお、体長は資料によって幅があります。2002年の資料には、71mm、79mm、85mmのオスの標本の話が載っていて(くわしくは入手難易度の節で紹介します)、85mmは62〜80mmという範囲より少し大きい数字です。

トゥクストラエンシスとセプテントリオナリスの違い

トゥクストラエンシスとセットで語られるのが、セプテントリオナリスです。ここでは、2つの亜種の見た目の違いと、分類をめぐる考え方を見ていきます。

近縁亜種との比較表

Wikipediaの記載から、トゥクストラエンシス、同じメキシコ南部に分布するセプテントリオナリス、パナマ南部から南米北西部にいるオキシデンタリスの3亜種を並べてみました。

亜種頭角胸角上翅オスの大きさ分布
トゥクストラエンシス短く、中央付近で湾曲細い。基部が明らかに湾曲し、点刻は比較的粗い汚黄色で、黒紋は小さい62〜80mmメキシコ南部(ベラクルス州)
セプテントリオナリス長いかなり細い。基部が明らかに湾曲し、点刻は小さくやや多い濁った黄褐色で、黒紋は比較的大きい70〜158mmメキシコ南部(チアパス州)〜パナマ北部
オキシデンタリス長く、やや直線的細い。基部は湾曲するがセプテントリオナリスほどではないやや明るい黄色〜黄褐色で、黒紋は不安定70〜164.2mmパナマ南部・コロンビア西部・エクアドル北西部

並べてみると、トゥクストラエンシスとセプテントリオナリスは、胸角の基部が明らかに湾曲する点が共通しています。一方で、トゥクストラエンシスは頭角が短く、上翅の黒紋が小さく、体も小さいという違いがあります。セプテントリオナリスの飼育下の記録は155.1mm(2021年時点・コスタリカ産)まで伸びているので、大きさの差はかなりのものです。

トゥクストラエンシスとセプテントリオナリスの違い(頭角の長さ、上翅の黒紋、オスの大きさ、分布)

セプテントリオナリスと同じ亜種とみる説

トゥクストラエンシスには、「セプテントリオナリスと同じ亜種ではないか」という見方があります。Wikipediaによると、記載に使われた2頭のオス以外に、トゥクストラエンシスと認められる個体は2006年時点でもまだ見られていません。比べられる個体がほとんどないため、セプテントリオナリスと同じ亜種とみなす研究者もいるそうです。

生物の分類をまとめた国際的なデータベースのGBIFでも、トゥクストラエンシスはセプテントリオナリスのシノニム(同じものを指す別の名前)として扱われています(参考:GBIF)。英語版Wikipediaの亜種一覧でも、トゥクストラエンシスはセプテントリオナリスの項にまとめて書かれています。

とはいえ、日本語版Wikipediaや当サイトの種類の記事では、トゥクストラエンシスは13亜種の1つとして紹介されています。どちらが正しいと決めつけるより、「分け方に議論がある亜種」として知っておくのがよいと私は考えています。今後、新しい個体が見つかったり研究が進んだりすれば、扱いが変わる可能性もあります。

はると

わずか2頭のオスから名前がついた亜種なので、分類が揺れるのも無理はないかなと思います。

比べる相手のセプテントリオナリスの大きさや飼育下の記録、オキシデンタリスとの見分け方は、ヘラクレス・セプテントリオナリスの特徴の記事で紹介しています。

ヘラクレス・トゥクストラエンシスの入手難易度と値段[レア度]

気になる入手のしやすさですが、当サイトの種類の記事での希少度は★5です。

生体の入手難易度|★★★★★

先に触れたとおり個体がほとんど知られておらず、メスも分かっていないので、生体のペアや幼虫をショップで見かけることは、まず考えにくいでしょう。

もし「トゥクストラエンシス」と書かれた出品や標本を見かけたときは、名前だけで判断せず、いくつか確かめておきたいことがあります。まず、産地がメキシコのベラクルス州、ロス・トゥクストラスやサンタ・マルタ山塊と書かれているかどうかです。同じメキシコ南部でも、チアパス州はセプテントリオナリスの分布として挙げられています。次に、オスの大きさが62〜80mm前後の小型かどうか、頭角が短く中央付近で曲がっているかどうかも、特徴と照らし合わせるポイントになります。ただ、セプテントリオナリスのオスも70mmからなので、大きさだけでは見分けられません。

「トゥクストラエンシス」と書かれた出品や標本の確認点(産地がベラクルス州か、オスが62〜80mm前後か、頭角が短く中央付近で曲がるか、名前だけで判断しない)

分からない点があれば、出品者に産地や採集の記録を質問してみるのがよいでしょう。

標本の値段の記録

知られている個体が少ないため、相場と呼べる値段はありません。数少ない記録として、Wikipediaには、奈良オオクワセンターがオスの標本3体(体長71mm、79mm、85mm)を220万円で購入したという話が、2002年の資料をもとに紹介されています。3体でこの金額ですから、それだけ珍しいものとして扱われていたことがうかがえます。

なお、この購入記録は2002年の資料に載っているもので、2006年の資料では、記載に使われた2頭のオス以外に認められた個体は見られていないとされています。ヘラクレス全体の値段の考え方は、ヘラクレスオオカブトの値段の相場をまとめた記事で紹介しています。

はると

80mm前後の小さなヘラクレスの標本が、3体で220万円。数字だけ見ても、この亜種の珍しさが伝わってきます。

ヘラクレス・トゥクストラエンシスの飼育方法

トゥクストラエンシスはメスが知られておらず、飼育の記録も見当たらないため、この亜種だけの飼育方法は分かっていません。もし同じヘラクレスオオカブトとして飼う機会があるなら、まずは一般的なヘラクレスの管理に沿って考えることになります。

当サイトの飼育まとめで案内している温度の目安は、成虫が22〜25℃、幼虫が20〜23℃、蛹が20〜22℃です。孵化から羽化までは、オスで約1年半〜2年かかります。温度管理の考え方はヘラクレスオオカブトの温度管理の記事、幼虫の育て方はヘラクレスオオカブトの幼虫の育て方の記事に詳しくまとめています。

成虫の寿命は、当サイトのヘラクレスオオカブトの寿命の記事で紹介しているとおり、後食(羽化後に初めてエサを食べること)から半年〜1年ほどが目安です。個体が手に入ることはまず考えにくい亜種ですが、もし迎えることがあれば、一般的な管理で様子を見ながら温度や湿度を記録していくのがおすすめです。

まとめ

ヘラクレス・トゥクストラエンシスは、1993年に記載された、メキシコ南部ベラクルス州のロス・トゥクストラスとサンタ・マルタ山塊に分布する亜種です。名前は産地のロス・トゥクストラスに由来し、全亜種のなかでもっとも北に分布します。オスは62〜80mmの小型で、頭角は短く中央付近で曲がり、上翅は汚れたような黄色で黒紋が小さく、メスは分かっていません。2006年時点では記載に使われた2頭のオス以外に認められる個体が見られておらず、セプテントリオナリスと同じ亜種とみる説もあります。当サイトの評価では希少度★5で、生体を手に入れるのはまず難しい亜種です。

当サイトではそれぞれの飼育フェーズに合った情報を紹介しています。ぜひ以下の記事もご覧になってみてください。

最後まで読んでいただき、お疲れさまでした。トゥクストラエンシスのように謎の多い亜種を知ると、ヘラクレスの世界の奥深さを感じられるはずです。この記事が少しでも役に立ったなら、私もうれしいです^^

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