
ヘラクレス・セプテントリオナリスの特徴は?生息地・大きさ・オキシデンタリスとの違いを解説
ヘラクレスオオカブトの亜種を調べていると、「セプテントリオナリス」という長くて覚えにくい名前に出会いますよね。オキシデンタリスとよく似ているとも言われますが、写真を見比べても違いがなかなかつかめない方も多いのではないでしょうか。
実は、セプテントリオナリスは中米の雲霧林に暮らす亜種で、13亜種のなかでも胸角がとりわけ細いのが持ち味です。オキシデンタリスとの見分けも、角の細かな形を知っておくとぐっと分かりやすくなります。
この記事では、名前の意味、生息地、特徴と大きさ、オキシデンタリスとの違い、入手難易度、販売元の記録をもとにした育て方までを解説します。読み終えるころには、セプテントリオナリスをどこで見分ければよいのかが分かるでしょう。
- セプテントリオナリスは1985年に記載された、メキシコ南部からパナマにかけての中米に分布する亜種で、名前は「北の」という意味
- 特徴は長い頭角と、Wikipediaの亜種の比較表で唯一「かなり細い」とされる胸角、濁った黄褐色の上翅。オスは70〜158mmで、野外の記録は163mm、飼育下の記録は155.1mm(2021年時点)
- オキシデンタリスとは頭角の突起の形と胸角の付け根の曲がりで見分ける。希少度は★2〜★4と幅があり、販売元の記録では25℃前後で約11か月で羽化した例がある
ヘラクレス・セプテントリオナリスとは
ヘラクレス・セプテントリオナリス(学名:Dynastes hercules septentrionalis)は、ヘラクレスオオカブトを13の亜種に分ける従来の分類で、そのうちの1つに数えられている亜種です。一般に「ヘラクレス」というと原名亜種ヘラクレス・ヘラクレス(通称ヘラヘラ)を指すことが多いのですが、セプテントリオナリスはそれとは別に、中米に分布する亜種として扱われています。販売元のブログなどでは「セプテン」と縮めて呼ばれることもあります。
1985年に記載された中米の亜種
13亜種の全体像はヘラクレスオオカブトの種類は13種類!それぞれの特徴や希少性の違いとはにまとめています。セプテントリオナリスの基産地(記載のもとになった標本の産地)はグアテマラとされています。
Wikipedia「ヘラクレスオオカブト」によると、セプテントリオナリスはLachaume氏が1985年に記載した亜種です。同じ年に同じLachaume氏が、オキシデンタリスとリッキーも記載しています。基本データを表にまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学名 | Dynastes hercules septentrionalis |
| 記載 | Lachaume, 1985 |
| 分布 | メキシコ南部(チアパス州)からグアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマにかけての中米。ベリーズを含めるかやパナマ国内の範囲は資料によって幅がある |
| 体長 | オス70〜158mm/メス55〜70mm |
| 最大記録 | 野外のオス163mm/飼育下のオス155.1mm(2021年時点・コスタリカ・カルタゴ産) |
| 希少度 | ★★☆☆☆〜★★★★☆ |
名前の意味は「北の」
セプテントリオナリスという名前は、「北の」という意味だとWikipediaに書かれています。同じ年に記載されたオキシデンタリスは「西部の」という意味なので、方角にちなんだ名前が並んでいるわけです。
ちょっと面白いのは、13亜種のなかでいちばん北に分布するのは、トゥクストラエンシスとされている点です。ただ、トゥクストラエンシスはセプテントリオナリスと同じ亜種だと考える研究者もいます。
「北の」と「西部の」が同じ年に名付けられていると知ると、長い学名も少し覚えやすくなる気がします笑
ヘラクレス・セプテントリオナリスの生息地
メキシコ南部からパナマまでの中米
Wikipediaでは、分布をメキシコ南部(チアパス州、シエラ・ノルテ山脈)、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマ北部のカリブ海側の山塊としています。おそらく中米の全体に分布している、という見方も添えられています。
資料によってはベリーズも分布に含め、パナマでの範囲を中部までとするものもあります。細かな範囲には幅がありますが、メキシコ南部からパナマにかけての中米という大枠は共通しています。ほかの亜種を含めた全体像はヘラクレスオオカブトの生息地を紹介した記事で見られます。
雲霧林で暮らす野外の姿
Wikipediaによると、セプテントリオナリスは中米の雲霧林(雲や霧がかかりやすい山地の森)に生息しています。
Wikipediaには、野外での暮らしぶりが分かる観察記録も載っています。コスタリカのアラフエラ州では、標高700〜900mあたりに生息していて、5〜6月の雨季に多くの成虫が見られたという記録があります。ロンコカルプス属の木の樹液によく集まり、外灯には2時から3時ごろに多く飛んでくるそうです。
夜更けに、霧の出る森から灯りに向かって大きなヘラクレスが飛んでくる様子を想像すると、迫力がありますよね。
ヘラクレス・セプテントリオナリスの特徴
長い頭角とかなり細い胸角
オスの頭角(下側に伸びる角)は長く、先端の突起はやや強く湾曲しています。先端の手前の突起は棒状で、先は尖りません。付け根近くの突起も1本の棒状で、こちらも尖らないとされています。
いちばんの個性は胸角(上側に伸びる角)です。Wikipediaで13亜種の胸角の太さを並べた表では、セプテントリオナリスだけが「かなり細い」とされています。胸角の付け根の部分ははっきりと湾曲していて、突起は付け根の位置にあり、大きめです。
販売元の月夜野きのこ園のブログでも、羽化した個体の印象が「線の細い」「シャープ」といった言葉で書かれています。
濁った黄褐色の上翅と大きめの黒紋
上翅は濁った黄褐色で、黒紋は比較的大きめです。
体毛は黄褐色で、胸角の毛は赤褐色です。メスは背面の毛が短く、量も少ないとされています。小楯板(背中の中央にある三角形の部分)は、ほぼ全体が点刻でおおわれているそうです。角のないメスでは、こうした細部が手がかりになります。
個人的には、くすんだ黄褐色の上翅に細い胸角という組み合わせは、派手さよりも渋さで魅せるタイプだと思います。
大きさの目安とギネス(飼育記録)
大きさの目安は、オスが70〜158mm、メスが55〜70mmとされています(出典:Wikipedia「ヘラクレスオオカブト」)。
この目安の上限を超える個体もいて、野外で採れたオスには163mmの記録があります。飼育下の最大記録は、2007年時点で135.1mm、2008年時点で153.3mm、2021年時点で155.1mm(コスタリカ・カルタゴ産)と更新されてきました。飼育レコードはBE-KUWAの記録がもとで、むし社のビークワ飼育レコードのページでも一覧を見られます。

ここで目を引くのは、野外の記録(163mm)が飼育下の記録(155.1mm)を上回っていることです。同じWikipediaの記載でも、オキシデンタリスは野外160mm・飼育下164.2mmと飼育下の記録のほうが大きいので、逆の並びになっています。なぜこの並びになっているのかは、はっきりしていません。ほかの亜種を含めた記録の話は、ヘラクレスオオカブトのギネス記録の記事で紹介しています。
野外の163mmを飼育で超える日が来るのか、ちょっと楽しみな亜種です!
セプテントリオナリスとオキシデンタリスの違い
セプテントリオナリスとよく似ているのが、隣の地域に住むオキシデンタリスです。オキシデンタリスがどんな亜種なのかはヘラクレス・オキシデンタリスの記事で紹介しています。
見分けるなら頭角の突起と胸角の曲がり
まず頭角です。オキシデンタリスの頭角は長く、やや直線的で、先端の手前の突起は少し小さい板状です。付け根の突起は棒状で、先がやや尖ります。セプテントリオナリスは先端の手前の突起が棒状で尖らず、付け根の突起も尖らないので、突起の形と先の尖り具合が1つめの手がかりになります。
次に胸角です。オキシデンタリスの胸角も細いのですが、付け根の曲がりはセプテントリオナリスほど強くなく、突起は付け根で細長い形をしています。比較表での胸角の太さは、オキシデンタリスが「細い」、セプテントリオナリスが「かなり細い」です。
上翅の色にも違いがあります。オキシデンタリスはやや明るい黄色から黄褐色で、黒紋の出方が安定しません。前胸が黄色っぽくなる個体がいるのもオキシデンタリスの特徴です。メスでは、オキシデンタリスの背面の毛の長さは普通とされています。
| 亜種 | 頭角 | 胸角 | 上翅 | 分布 | 体長(オス) |
|---|---|---|---|---|---|
| セプテントリオナリス | 長い。先端手前の突起は棒状で尖らない。付け根の突起も尖らない | かなり細い。付け根がはっきり湾曲し、突起は付け根で大きい | 濁った黄褐色。黒紋は比較的大きい | メキシコ南部〜パナマの中米 | 70〜158mm |
| オキシデンタリス | 長くやや直線的。先端手前の突起は少し小さい板状。付け根の突起はやや尖る | 細い。付け根の曲がりは控えめで、突起は付け根で細長い | やや明るい黄色〜黄褐色。黒紋は安定しない | パナマ南部の太平洋側の山塊、コロンビア西部、エクアドル北西部 | 70〜164.2mm |
| トゥクストラエンシス | 短く、中央付近で湾曲 | 付け根がはっきり湾曲し、突起は付け根でやや大きい | 汚れたような黄色。黒紋は小さい | メキシコ南部(ベラクルス州のロス・トゥクストラス、サンタ・マルタ山塊) | 62〜80mm |

写真で見比べるときは、上翅の色よりも先に、頭角の先端手前の突起が棒状か板状か、胸角の付け根の曲がり具合を見るのがよいかと思います。
パナマの中間型とトゥクストラエンシス
ただ、角の形を覚えればいつでも見分けられる、というほど単純ではありません。Wikipediaによると、パナマではセプテントリオナリスとオキシデンタリスの中間型が見つかっていて、2つの亜種のあいだに正確な分布の境界があるのかどうかは分かっていません。当サイトの種類の記事でも、パナマ東部で両方の特徴をもつ個体が見つかっていることを紹介しています。
北側の隣にいるトゥクストラエンシスも、扱いが分かれる亜種です。日本語版Wikipediaでは、記載に使われたオス2頭以外に認められる個体が2006年時点で見られず、セプテントリオナリスと同じ亜種とみなす研究者もいると書かれています。英語版Wikipediaの亜種の一覧でも、トゥクストラエンシスはセプテントリオナリスの異名として並べて書かれています。
亜種の境目がはっきりしない地域があるのは、生き物が地続きでつながっている証拠でもあるのかなと思います。
同じ亜種とみる説があるトゥクストラエンシスの産地や、知られている個体の少なさについては、ヘラクレス・トゥクストラエンシスの特徴の記事にまとめています。
ヘラクレス・セプテントリオナリスの入手難易度[レア度]
希少度は★2〜★4と幅がある
当サイトの種類の記事では、セプテントリオナリスの希少度を★★☆☆☆〜★★★★☆としています。
Wikipediaによると、2001年の時点ではリッキーに次いで日本に輸入される標本が多い亜種でした。一方で生きた個体の入荷は少なく、2002年10月の時点では成虫のペアがサイズに関わらず10万円以上、幼虫1頭でも2〜3万円程度が相場と見られていたそうです。いずれも当時の話です。
2026年11月時点では、昆虫専門店の通販にセプテントリオナリスの商品ページがあります。値段の考え方はヘラクレスオオカブトの値段の相場をまとめた記事を参考にしてみてください。
販売個体を選ぶときは産地と累代を見る
セプテントリオナリスを選ぶときは、産地と累代の表記を確かめておくと安心です。飼育下の最大記録はコスタリカ・カルタゴ産で、販売元の飼育記録にもコスタリカ産の個体が登場します。
先ほど見たように、パナマではオキシデンタリスとの中間型が出ていて、見た目だけでは判断しにくい場合があります。産地がはっきり書かれ、CBF1のような累代表記がある個体を選び、気になる点は購入前に販売者へ質問してみるのがよいでしょう。
ヘラクレス・セプテントリオナリスの飼育方法
セプテントリオナリスは、ヘラヘラなどと同じく幼虫飼育も産卵も難しくない亜種だと、販売元の月夜野きのこ園は紹介しています。
販売元の飼育記録に見る育ち方
月夜野きのこ園の1つめの羽化の記録では、きのこマットを使い、小さめのプラケース(W230×D155×H170)で25℃前後で管理して、108mmの個体が羽化しています。羽化までの期間は11か月と記録されています。ケースの長い辺に蛹室を作り、そのまま羽化できたそうです。
2つめの羽化の記録では、同じ大きさのケースに2齢で入れて育て、エサの交換は4〜5回、25℃前後の管理で、2齢で入れてから約11か月で132mmのオスが羽化しました。ただ、蛹室がケースの側面に大きな窓をあけ、角の先端側が窮屈だったため、胸角の先が少し下に曲がってしまい、人工蛹室にすべきだったと振り返られています。
3つめの前蛹の記録は、コスタリカ産のCBF1のオスです。クリーンケースS(W235×D155×H185)に2齢で入れてから約9か月(記録では合計11か月程度)で前蛹になり、そのときの体重は83gでした。ケースの短い辺に蛹室を作ったため、人工蛹室へ移しています。
長い角をもつ亜種なので、蛹室の向きと位置は早めに確かめておきたいところです。人工蛹室の作り方はヘラクレスオオカブトの人工蛹室の記事で詳しく紹介しています。
当サイトの目安で育てるときのポイント
当サイトでは、成虫を22〜25℃、幼虫を20〜23℃、蛹と前蛹を20〜22℃で管理するのを目安にしています。この温度帯では、孵化から羽化までオスで約1年半〜2年、メスで約1年〜1年半かかります。月夜野の記録はこれより高い25℃前後で管理した例で、期間も2齢で入れてからの数え方なので、この目安とそのまま比べられるものではありません。なお当サイトの温度管理の目安では、25〜26℃は幼虫が早く育つ一方で小さめに仕上がりやすい温度帯としています。温度の決め方はヘラクレスオオカブトの温度管理の記事にまとめています。
3齢のオスは約10Lの容器で1匹ずつ育て、体重はまず100gを目標にするのが当サイトの目安です。マットの交換や容器の選び方はヘラクレスオオカブトの幼虫の育て方の記事で紹介しています。成虫になってからの寿命は、後食(羽化後に初めてエサを食べること)から半年〜1年ほどが目安です。
まとめ
ヘラクレス・セプテントリオナリスは、1985年に記載された、メキシコ南部からパナマにかけての中米の雲霧林に暮らす亜種です。長い頭角と、とりわけ細い胸角、濁った黄褐色の上翅が特徴で、オスは70〜158mm、飼育下の記録は155.1mm(2021年時点)です。オキシデンタリスとは頭角の突起と胸角の付け根の曲がりで見分けます。
当サイトではそれぞれの飼育フェーズに合った情報を紹介しています。ぜひ以下の記事もご覧になってみてください。
最後まで読んでいただき、お疲れさまでした。名前の意味や生息地を知ってから細い胸角を眺めると、愛着もいっそう深まるはずです。この記事が少しでも役に立ったなら、私もうれしいです^^
おすすめ記事

ヘラクレスオオカブトとコーカサスオオカブトの違い|大きさ・強さ・性格・飼いやすさを比較
2026.11.02
ヘラクレスオオカブトの特徴とは?大きさ・角・色が変わる理由・生態をわかりやすく解説
2026.11.02
ヘラクレス・レイディの特徴は?産地・大きさ・飼育記録・値段・幼虫期間を解説
2026.11.02
ヘラクレス・トゥクストラエンシスの特徴は?生息地・大きさ・値段・入手難易度を解説
2026.11.02
ヘラクレスオオカブトの羽化ズレとは?原因と対策、どれくらいまで交尾できるかの目安
2026.11.01