アマゾニコ血統のヘラクレスオオカブトはギネス記録(2020年5月現在)である181㎜の個体を生み出したことで有名ですが、どのように育てればあのように大きく育つのでしょうか。
この記事では、アマゾニコ式のヘラクレスオオカブトのブリード方法をペアリング、産卵セット、幼虫飼育、蛹管理、成虫管理と細かく分類して解説していきますので、大きなヘラクレスを育てたい方は必見です!
目次
まずはじめに
まずはヘラクレスオオカブトをブリードする準備が必要です。先にお伝えしておきますと、アマゾニコ式ヘラクレスブリードの“キー”となるのは以下の2つです。
- 優良血統のヘラクレスオオカブトペア
- Rushのレギュラーマット
もう少し詳しく見ていきましょう。
優良血統のヘラクレスオオカブトペア
超大型のヘラクレスオオカブトを生み出すためには、大型になる遺伝子を持つ親が必要になります。小さめな個体でも大きくなる遺伝子を秘めている可能性はありますが、なるべく大きめな個体を購入する方がよいでしょう。
おすすめの血統はOAKS血統(読み:オークス血統)です。Amazonico血統を生み出した松田さんも、181㎜の個体を出した際に使用したメス親はOAKS血統だったそうです。
オークス血統はオークションでもよく見かけますが、血統詐欺(優良血統だと偽って、無名血統のヘラクレスを売りつける行為)というトラブルが存在するのも事実です。オークションに慣れていない方は信用・信頼できるショップで購入するようにしましょう。
Rushのレギュラーマット
ヘラクレスオオカブトに限った話ではありませんが、カブトムシやクワガタは成虫になってから大きくなることはありません。つまり、大きく育てるためには幼虫期間にどれだけ大きくすることができるかが重要になります。
幼虫を大きく育てるためにアマゾニコの松田さんが使用しているマットは「Rushのレギュラーマット(通称:ラッシュマット)」です。アマゾニコ式ヘラクレスブリードで面白いポイントは、産卵セットから幼虫飼育まですべてこのRushのレギュラーマットを使用している点にあります。さらに、添加剤も一切加えていない、オリジナルのままのラッシュマットを使用しているとのことですので、どなたでも再現可能な点も魅力的ですよね。
アマゾニコ式ヘラクレスブリード:ペアリング編
お気に入りのヘラクレスオオカブトのペアを手に入れたらさっそくペアリング(交尾)させましょう、、というわけにはいきません!
ヘラクレスオオカブトが成熟しているかを見極める
ペアリングをする前に手持ちのヘラクレスがしっかり成熟しているかを確認しましょう。成熟していないと、無精卵しか生まなかったり、生体に余計な負荷をかけてしまったりといいことは一つもありません。
- よく動き回っている
- エサを食べている
- 飛ぼうとする(メスによくみられる)
上記3つのポイントが当てはまるようになってから2週間ほど経過すれば、しっかり成熟したといえるでしょう。
ヘラクレスオオカブトのペアリング方法
成熟が確認できたら、ようやくペアリングです。
ヘラクレスオオカブトのペアリング方法で一番簡単な方法はハンドペアリングです。ハンドペアリングとは、一言でいうと、人工的に(強制的に)ペアリングをさせる方法のことです。
やり方はいたって簡単で、メスの上にオスをのせる、たったこれだけです。通常、これだけですぐに交尾行動が始まり、オスの生殖器がメスに挿入されてから30分~1時間ほどで終了します(終了すればオスの生殖器は勝手に外れます)。
これでうまくいかない場合は、オスとメスのどちらか(あるいはどちらも)が成熟していない可能性があるので、日を改めてめげずに再度挑戦しましょう。
アマゾニコ式のペアリングでは、1匹のオスに対して8匹のメスと交尾をさせるみたいだよ!1匹のメスからたくさんの卵をとるのではなくて、メスの数で卵の数を確保するという考え方みたい。
アマゾニコ式ヘラクレスブリード:産卵編
ペアリングが終わって4日ほど経過したら、次はヘラクレスのメスを産卵セットに投入しましょう。
産卵セットの組み方がわからない方は上記の記事を参考にして組んでみてください。
アマゾニコ式の産卵セットで重要なことは以下の6点です。
- マットにはRushのレギュラーマットを使用する
- 水分量はマットを握ってダマができるくらい
- 24L程度のバックルボックスの8割ほどまでマットを固く詰める
- 転倒防止剤(備長炭と園芸用鉢底ネット)と昆虫ゼリー(※)をいれる
- メスを産卵セットに投入して20日後に次の産卵セットに移動(これを繰り返す)
- 卵での回収はしない(産卵セット日から4か月後に2齢中期~終期の幼虫を割り出す)
※アマゾニコ式では、昆虫ゼリーは「高タンパク乳酸ゼリーワイドS/フジコン(おそらくメス用)」と「ペロリアン昆虫ゼリー/ディ・キャッツ(おそらくオス用)」を使用しているそうです。
上記⑤に補足をしておくと、産卵セットから産卵セットへの移動を4~5回繰り返すと、メスが弱ってきて足の力も弱くなってきます。そうなると、固く詰めたマットを掘り進められなくなってしまうので、すこし緩めに詰めてあげるとよいでしょう。
メスが死亡するか、メスの体重がスカスカになるまで産卵セットは組み続けるみたいだよ。
アマゾニコ式ヘラクレスブリード:幼虫飼育編
ここからは幼虫飼育編です。産卵編でも紹介した通り、アマゾニコ式においては卵での回収は行わず、産卵セットを4か月放置し、ある程度育った幼虫の状態で回収をしていきます。
ここからは産卵セットを4か月放置して、幼虫を取り出せるようになったタイミングからの解説をしていきます。
オスとメスを判別してケースに分けて入れる
産卵セットを組んでから4か月が経過すると、卵が孵化して、2齢中期~終期ほどの幼虫まで育っているはずです。ヘラクレスオオカブトの幼虫はこの辺まで育つと、幼虫の腹部のへこみで雌雄を判別することができるようになります。
腹部に小さなへこみがある場合はオス、なければメス
オスの場合は1つのQ-BOX40に1頭ずつ、メスの場合は同じくQ-BOX40に3頭ずつ(もしくは、Q-BOX30に2頭ずつ)投入をして管理します。ちなみに、使用するマットは引き続き、Rushのレギュラーマットです。
2齢ほどの小さい幼虫であればブロー容器でもいいのでは?と感じる方もいるかもだけど、最終的にはQ-BOXで管理することを考えると、ブロー容器を洗う手間が省けるように最初からQ-BOXで管理しようという、効率を考えた結果みたいだよ。
マットの加水加減や交換頻度について
前述したとおり、幼虫飼育で使用するマットはRushのレギュラーマットになります。このマットはガス抜きが必須のマットになるので、購入してすぐに使用できない点は注意してください。
『発酵マットのガス抜きの方法や期間』も併せてご覧ください。
マットの加水加減
ガス抜きをするとマットが乾燥気味になるので、使用する前には少し加水をする必要がありますが、この時の加水加減はマットを握ってダマにならない程度を意識してください。産卵セットを組む際の水分量よりはやや少なめである点に注意しましょう。
注意点としては、水分を加えることによってマットの再発酵が進む可能性もあるため、万が一に備えて、新マットに交換後は4日間ほどケース本体と蓋との間に隙間を作ってあげるとよいでしょう。
アマゾニコ式では、新しいマットを使用する際はケースにマットを入れ終わった後、マットの一番上には古いマットを1~2㎝足しておくのがポイントみたいだよ!これによって、コバエの発生がかなり防げるみたい!
マットの交換頻度
アマゾニコ式のマット交換頻度は、3か月と20日前後です。
ただし、これはあくまでも目安であり、コバエや線虫が発生してマットの劣化が見られた際には、早めの交換を行ってあげるのがベストです。
メスの場合は多頭飼育をしているので、より高頻度、具体的には2.5か月~3か月ほどでマット交換をしてあげると、大型の個体に育ちやすくなります。
『ヘラクレスオオカブトの幼虫のマット交換頻度』も併せてご覧ください。
アマゾニコ式ヘラクレスブリード:蛹~羽化編
さて、ここまでが超大型ヘラクレスオオカブトを生み出す上で最も重要な部分でした。しかし、蛹~羽化の段階でも気を抜いてはいけません。角曲がりや羽パカのない、美しくかっこいいヘラクレスオオカブトを羽化させるためには蛹になる前の前蛹の状態からケアしてあげることが重要になります。丁寧に確認していきましょう。
蛹になるタイミングや時期について
2齢で幼虫を割り出して最初のQ-BOX投入を1回目とカウントすると、3回目(産卵セット日から約9か月後)が最終交換になります(成長が早い個体の場合は2回目の交換で蛹になることもあるようです)。
3回目の交換時は、新マットの追加はケースの半分程度までにして、上半分は古いマットを入れてあげましょう。
天然蛹室に手を加える
オスの場合は、3回目のマット交換が終了したら、時々ケースの側面や底面をチェックするようにしましょう。
飼育下のヘラクレスオオカブトは蛹の大きさに対して、蛹室の大きさを小さめに作ってしまう傾向があるため、蛹になってしまう前に蛹室を開けておく必要があるからです。
先に伝えておくと、今回のアマゾニコ式においてはオアシスなどを用いた人工蛹室は使用しないよ!
蛹室を開く前の準備
ケースの側面や底面から蛹室が確認できるようになったら、蛹室の周りのマットから徐々に取り除いていき、蛹室がどの辺にあるのか特定できる状態にしていきましょう。
蛹室の開き方その1【ケース下から蛹室らしきものが確認できる場合】
ケースの下から前蛹がほとんど見えない場合は、角のある方向と思われる方の先端を少しだけ崩して中を確認しましょう(一気に開いてしまうと前蛹ではなかったときに大事故になるため)。
前蛹であることを確認したら、角が引っ掛からない程度まで穴を広げて、蛹化を待ちます。
蛹室の開き方その2【ケース下から蛹室が確認できる場合】
ケースの下から前蛹が確認できる場合には、蛹室の天井部分から大胆に開いていきましょう。
前蛹が出てきましたら、蛹室を崩さないように幼虫を一度取り出します。取り出したら、蛹室の底面に古いマットを少量補充して霧吹きをし、下からの穴をふさいだ後に、幼虫を蛹室内に戻して蛹化を待ちます。
蛹室の開き方その3【どこからも蛹室が確認できない場合】
ケースのどこをみても蛹室が確認できない場合は、マット上部を確認して、マットの盛り上がりや盛り下がり(蛹室を作るために幼虫が動いた跡)が確認できてから35日前後、明らかに蛹室があることを確認してから30日前後で蛹室を開きます。
開き方としては、前述した「開き方その1」のような先端から開く方法が安全でしょう。
蛹化したら
蛹化を確認したら、なるべく静かにそっとしておきましょう。取り出して体長や体重を計測したくなる気持ちを抑えて羽化を待つのがポイントです。
アマゾニコ式ヘラクレスブリード:羽化後の成虫管理編
羽化まできたらもうひと踏ん張りです!羽化後まもなくのヘラクレスオオカブトは大変デリケートな状態ですので、無理に動かさずにそっとしておきましょう。
ここでは羽化後の管理で特に注意すべき点について紹介していきます。
乾燥気味な状態で2~3週間放置する
羽化を確認したら、乾燥気味に管理をするために、翌日に蓋を外しましょう。羽化したてのヘラクレスオオカブトは水分量が多く、ケース内の湿度も高くなりがちです。そのままの状態ですと、カビが発生してしまい、最悪の場合はヘラクレスオオカブトがカビにまかれて死んでしまう可能性もあるので注意しましょう。
蛹室の先端だけ開いていた個体の場合は、蛹室の中であおむけになっているタイミングを見計らって天井まで開いてしまおう!
蓋を外したら、あとはそっとしておきましょう。アマゾニコ式では、オスの場合は羽化後25日前後、メスの場合は2週間後前後で個体を取り出すようです。
以上がアマゾニコ式のヘラクレスブリード方法でした。ここまで読んでくださった方はお疲れさまでした。最後に、よくある質問コーナーもご用意いたしましたので、ご興味ある方は最後までご覧いただけると嬉しいです。
アマゾニコ式ヘラクレスブリードのよくある質問
アマゾニコ式では、通年20℃前後の低温管理をしているそうです。
アマゾニコ式では、3か月と20日前後おきにマット交換をするようです。
ギネス記録181㎜を樹立したAmazonico血統『神聖』の幼虫時最大体重は149gだったそうです。
アマゾニコ式ではオアシスなどの人工蛹室は使わずに、天然蛹室を加工したものを使用して羽化までもっていくそうですが、これで羽化不全になった個体は今までにいないそうです。また、アマゾニコの松田さんは、羽化不全を防ぐには羽化不全が少ない血統であることも重要だとおっしゃっています。
まとめ
アマゾニコ式のヘラクレスブリード方法はいかがでしたでしょうか。あなたの知っているブリード方法と異なる点はありましたか?
もしこの記事を読んで何か一つでも学びになったものがあったのなら、私も大変うれしいです。
今回ご紹介したブリード方法は、BE-KUWA 63号に掲載されていた内容を筆者なりにまとめてみたものになります。この記事を読んで少しでも興味を持っていただいた方は、ぜひ雑誌の方も手に取っていただければと思います。写真付きでよりわかりやすく解説されているので、さらなる理解の助けになるはずです。