
ヘラクレス・リッキーの特徴は?ヘラクレス・ヘラクレスとの違いや生息地・大きさを解説
「ヘラクレス・リッキー」という名前はよく聞くけれど、いちばん有名な原名亜種のヘラクレス・ヘラクレス(通称ヘラヘラ)と何が違うのか、どこで採れてどれくらいの大きさになるのか、調べてみても情報がバラバラで混乱してしまった、という方は多いのではないでしょうか。ブルーの話題とも混ざってしまって、リッキーが亜種の名前なのか、青いヘラクレスの名前なのかさえはっきりしないですよね。
実は、リッキーの特徴は「胸角の太さ」「上翅の色と光沢」「体毛の色」「産地」の4点で整理すると、ヘラヘラとの違いがぐっと見えやすくなります。なぜなら、どちらも同じヘラクレスオオカブトの亜種で大きさや迫力はよく似ている一方、角の作りや上翅の質感、そして暮らしている地域がはっきり違うからです。
この記事では、リッキーの基本データと名前の由来、生息地、ヘラクレス・ヘラクレスとの違い、大きさと飼育下の記録、入手難易度と価格の目安、飼育の考え方までをまとめました。この記事を読めば、店頭やオークションで「リッキー」という名前を見かけたときに、落ち着いて中身を判断できるようになるでしょう。
- ヘラクレス・リッキーは原名亜種のヘラヘラに次ぐ大型亜種で、アンデス山脈沿いのベネズエラ〜ボリビアに広く分布する
- ヘラヘラとの違いは胸角が細くスラっとしていること、上翅の光沢が弱めで黄褐色〜オリーブ色寄りなこと。飼育下の最大記録は180mmを超える
- ペアの価格は2015年時点で8,000円〜5万円程度という情報がある。飼育はヘラヘラと同じ考え方でよい
ヘラクレス・リッキーとは
まずは、リッキーがヘラクレスオオカブトの中でどんな立ち位置の亜種なのかを押さえておきましょう。
原名亜種に次ぐ大型亜種
ヘラクレスオオカブトには13の亜種があり、全体像はヘラクレスオオカブトの種類は13種類!それぞれの特徴や希少性の違いとはにまとめています。その中でリッキーは、学名を Dynastes hercules lichyi といい、1985年に Lachaume 氏によって記載された亜種です。体の大きさは原名亜種のヘラクレス・ヘラクレスに次ぐといわれています(参考:Wikipedia「ヘラクレスオオカブト」)。
基本データを先に表にしておきます。体長には出典によって幅があるので、ここでは目安として見てください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学名 | Dynastes hercules lichyi |
| 記載 | 1985年(Lachaume) |
| 分布 | ベネズエラ・コロンビア・エクアドル・ペルー・ボリビア(アンデス山脈沿い) |
| 体長(オス) | おおよそ60〜170mm台(出典により幅がある) |
| 体長(メス) | 50〜75mm前後 |
| 最大記録 | 野外171mm/飼育下180.7mm(2022年時点・エクアドル ナポ県コサンガ産) |
| 希少度の目安 | ★☆☆☆☆〜★★★★☆(産地やサイズで大きく変わる) |
リッキーは個体による見た目の違い(個体変異)が多い亜種だといわれています。同じリッキーでも角の形や上翅の色味が少しずつ違うので、慣れるまでは「これはリッキーらしい」「これはちょっと違うかも」と迷う場面もあるかもしれません。また、エクアドルではネプチューンオオカブトと生息域が重なり、競い合う場面もあるそうです。Wikipediaには、リッキーをヘラクレスオオカブトの中でも戦闘力が最も高い亜種と評する人がいる、という記述もあります。

世界最大級の迫力がありながら、ヘラヘラとは違う細身でスラっとした雰囲気があるのが、リッキーの魅力だと思っています。違いを知ってから選ぶと、亜種選びの時間がぐっと楽しくなりますよ。
名前の由来とブルーとの関係
「リッキー」という名前は、フランス人の Rene Lichy さんにちなんだものだとされています。Lichy は「リシ」と読む表記もあるのですが、日本では「リッキー」という呼び方がすっかり定着していますよね(出典:Wikipedia「ヘラクレスオオカブト」)。
ここで整理しておきたいのが「リッキーブルー」との関係です。『甲虫王者ムシキング』のカードをきっかけに広まったとされる名前の影響で、リッキーといえば青いヘラクレス、というイメージを持っている方もいるのではないでしょうか。ただ、ブルーは「上翅が青白く見える個体」を指す通称で、亜種の名前ではありません。ブルーが発現しやすい亜種としてリッキーが有名というだけで、リッキー以外の亜種でも出る可能性があります。実在するのか、どう作られるのか、といった詳しい話はブルーヘラクレス・リッキーブルーについて解説した記事で紹介しています。
ヘラクレス・リッキーの生息地
次に、リッキーがどんな場所に暮らしているのかを見ていきましょう。生息地を知ると、流通している個体の産地表記の意味もわかりやすくなります。
アンデス山脈沿いの5か国に分布
リッキーが分布しているのは、南アメリカ北西部のアンデス山脈沿いで、ベネズエラ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビアの5か国です。細かく見ると、ベネズエラは北西部から南西部、コロンビアは北部、エクアドルは北部、ペルーは中央部、ボリビアは北部と中央部で確認されているとされ、基産地(亜種を最初に記載したときの基準の産地)はベネズエラの Rancho Grande(ランチョ・グランデ)です(参考:Wikipedia「ヘラクレスオオカブト」)。全13亜種の生息地を地図のイメージで知りたい方は、ヘラクレスオオカブトの生息地を紹介した記事もあわせてご覧ください。
暮らしている高さは標高500〜2000mほどで、とくに標高1500m前後で個体数が多いとされています。国によっても差があり、ボリビアでは特に少ないそうです。エクアドルでは12月から翌年4月ごろまでが最も個体数が多い時期ですが、雨季などの気候条件によって発生のピークにはムラがあるといわれます。成虫は灯火に飛来する観察例が多く、エクアドルのナポ県では樹液に集まる姿も観察されているという情報があります。
分布の広さについては、「ヘラクレスの中で最も広い」と説明されることもあれば、エクアトリアヌスに次ぐ2番目の広さとされることもあります。どちらにしても、ヘラクレスオオカブトの中でトップクラスに広く分布する亜種であることは確かなようです。
エクアトリアヌスとの棲み分け
リッキーと生息地が隣り合っている亜種に、エクアトリアヌスがいます。エクアトリアヌスはアンデス山脈の東側からアマゾン川の上流〜中流域に広がる亜種で、リッキーより低い土地に分布しています。つまり、同じ地域でも標高によって暮らす亜種が分かれているわけです。ただ、両者の生息地は隣接していると考えられていて、分布の境界に近い場所では、エクアトリアヌスに似た特徴をもつ個体や、交雑と思われる中間的な個体が出ることがあります。
もう一つ、同じアンデス系の亜種としてオキシデンタリスも挙げておきます。こちらは太平洋側のパナマ南部〜コロンビア西部〜エクアドル北西部に分布する亜種で、標高の低いエリアに暮らしています。詳しい特徴や価格の傾向はヘラクレス・オキシデンタリスの特徴を解説した記事で紹介しています。3亜種の位置関係を表にまとめると次のとおりです(参考:Wikipedia「ヘラクレスオオカブト」)。
| 亜種 | 分布 | 標高の位置づけ | オスの体長 |
|---|---|---|---|
| リッキー | ベネズエラ〜ボリビアのアンデス山脈沿い | 標高500〜2000m(1500m前後に多い) | 85〜180mm台 |
| エクアトリアヌス | アンデス山脈東部〜アマゾン川上流・中流域 | リッキーより低地 | 80〜165mm |
| オキシデンタリス | パナマ南部〜コロンビア西部〜エクアドル北西部の太平洋側 | 標高の低いエリア | 70〜164.2mm |
見た目の目安としては、リッキーの上翅がやや濁った薄いオリーブ色〜濁った黄褐色なのに対し、エクアトリアヌスは光沢が鈍く、黄褐色から明るい黄色になりやすいとされています。ただ、先ほど触れた境界の中間個体もいるので、見た目だけで決め切るのは難しいところです。

個人的には、見た目の印象で亜種を決めつけるより、販売ページに書かれた産地や採集地の表記を一緒に確認するほうが確実かと思います。自然界で標高をまたいで中間的な個体が出る以上、見た目だけの判断には限界がありますからね。
ヘラクレス・ヘラクレスとリッキーの違い
ヘラヘラとリッキーの違いを、表で見比べてみましょう。
| 項目 | ヘラクレス・ヘラクレス | ヘラクレス・リッキー |
|---|---|---|
| 胸角 | 非常に長く、基部が極めて太い | 細くスラっとした印象で、基部はあまり湾曲しない |
| 上翅の色・光沢 | 光沢が比較的強い黄土色〜やや青みがかったオリーブ色 | 光沢がやや弱く、濁った薄いオリーブ色〜濁った黄褐色。黒斑は安定しない |
| 体毛 | 白黄色 | 黄褐色(オスの胸角では赤褐色) |
| 最大記録 | 野外172.7mm(1932年)/飼育下184.3mm(2025年時点) | 野外171mm/飼育下180.7mm(2022年時点) |
| 分布 | 小アンティル諸島(グアドループ諸島、ドミニカ島) | アンデス山脈沿い(ベネズエラ〜ボリビア) |
| 流通 | 日本で流通の多い亜種のひとつ | 日本で流通の多い亜種のひとつ。生体はエクアドル産・コロンビア産が多い |
角の形の違い
まず目に入りやすいのは胸角です。ヘラクレス・ヘラクレスは胸角が非常に長く、根元がどっしり太いのが特徴で、リッキーと並べると胸角が太く見えます。それに対してリッキーの胸角は、細くスラっとした印象です。
頭角のほうにも、リッキーならではの特徴があります。やや長めで直線的に伸び、先端の突起は強く湾曲していて、先端の手前にある突起は大きな板状です。頭角の根元にある突起は一本の棒状で、その先端は少し尖っています。リッキーは個体変異が多い亜種ですから、頭角の形だけで決めるのはおすすめしません。まず胸角の太さを見て、そのうえで頭角や上翅を合わせて判断するくらいがちょうどいいかと思います。
上翅の色と光沢の違い
上翅の色も大事な手がかりです。ヘラヘラの上翅は光沢が比較的強く、黄土色や、やや青みがかったオリーブ色に見えます。リッキーは光沢がやや弱く、少し濁った薄いオリーブ色から濁った黄褐色で、黒い斑点の出方も安定しません。体毛もヘラヘラが白黄色なのに対し、リッキーは黄褐色で、オスの胸角の毛は赤褐色を帯びます。
ここで注意したいのが、上翅の色は個体差が大きいという点です。ブルー系の個体が出ることもありますから、色だけで亜種を言い切るのは避けたほうが安全でしょう。

写真で見比べるなら、まず「胸角の根元が太いか細いか」、次に「上翅がツヤっとしているか、少し落ち着いた色か」の順で見ると迷いにくいですよ!
大きさと記録の違い
大きさでは、ヘラヘラがやはり一歩リードしています。飼育下の最大記録は、ヘラヘラが184.3mm(2025年時点)で、クワガタ・カブトムシ専門誌『BE・KUWA』を出しているむし社の飼育レコードに載っています(参考:むし社 ビークワ飼育レコード)。一方のリッキーは、2022年時点の飼育下最大が180.7mmです。測定の年が異なるので単純には比べられませんが、差はおよそ3.6mmほどで、野外の最大記録でもヘラヘラの172.7mmに対してリッキーが171mmと、数字だけを見ればかなり肉薄しています。ヘラクレス全体の記録の歴史はヘラクレスオオカブトのギネス記録の歴代と最新情報をまとめた記事で紹介しています。
記録の上限はヘラヘラが上ですが、リッキーでも180mmを超えるオスが飼育下で育っているのは事実です。とにかく記録を狙うならヘラヘラ、入手のしやすさや見た目の好みも含めて選ぶならリッキー、というのが私の印象です。
ヘラクレス・リッキーの大きさと飼育下の記録
リッキーの大きさを、もう少し具体的に見てみましょう。オスは出典によって幅があり、おおよそ60〜170mm台と考えておくとイメージしやすいかと思います。メスは50〜75mm前後で、オスに比べるとかなりコンパクトです。オスとメスの差やほかの亜種との比較はヘラクレスオオカブトの大きさをオス・メス別に解説した記事に詳しく書いています。
記録をたどると、飼育下の最大記録は2005年時点で165.2mm、2013年時点で167.5mm、2022年時点で180.7mmと推移しています(参考:Wikipedia「ヘラクレスオオカブト」)。2005年から2022年の間に15mm以上も伸びた計算で、この背景には飼育技術の進歩もあるのでしょう。180.7mmの個体はエクアドルのナポ県コサンガ産とされていて、エクアドル産は大型の個体が多いといわれています。
ここで気になるのは、「じゃあ自分が育てても180mmを超えられるの?」というところですよね。サイズは産地だけでなく、幼虫期の温度やマットの管理、親の血統にも左右されます。野外の最大記録が171mmですから、飼育下でそれに近づけるだけでも十分に立派だといえるでしょう。

野外の最大記録171mmを、飼育下の個体が10mm近く上回っているというのは、考えてみるとすごいことですよね。管理の工夫しだいで、自然の中より大きく育つこともあるのがヘラクレス飼育の面白さだと思います笑
ヘラクレス・リッキーの入手難易度と価格
購入を考えている方がいちばん気になるのは、手に入れやすさとお金の話かもしれません。まずは入手難易度から見ていきましょう。
店舗・オークションでの入手難易度|★★☆☆☆
リッキーは、1998年時点で日本では最も標本を入手しやすい亜種とされ、2001年時点でも輸入される標本の数が最も多く、博物館の展示でも多く見られる亜種でした(参考:Wikipedia「ヘラクレスオオカブト」)。生体の流通はエクアドル産とコロンビア産が多く、次いでペルー産が多い一方、ベネズエラ産とボリビア産は標本でもほとんど流通していないという情報があります。
入手難易度は、個人的には星2つ(★★☆☆☆)くらいかと感じています。先ほどの基本データの表では希少度が★1つから★4つまで幅広くなっていましたが、これは産地やサイズによる違いで、標準的なサイズのエクアドル産やコロンビア産であれば、手に入れやすい部類に入るでしょう。逆にベネズエラ産やボリビア産を探す場合や、大きなサイズを指定する場合は、選択肢がぐっと減る傾向があります。
もうひとつ気をつけたいのが、亜種の取り違えです。ヘラクレスオオカブトには13の亜種があるため、リッキーとして買ったつもりが別の亜種だった、ということも起こりえます。購入前には、産地の表記と写真の両方を確認しておくと安心です。
価格の目安(2015年時点の資料)
2015年時点の資料では、リッキーの雌雄ペアの通常価格は8,000円から5万円程度という情報があります(参考:Wikipedia「ヘラクレスオオカブト」)。実際の価格は、個体の大きさや産地によって幅があります。
これはあくまで過去の目安なので、いま買おうとしている方は、サイズ別・血統別の最新の傾向をヘラクレスオオカブトの値段の相場をまとめた記事で確認してみてください。気になる個体があれば複数のお店を見比べてから決めるのがよいでしょう。
ヘラクレス・リッキーの飼育方法
リッキーの飼い方は、基本的にヘラクレス・ヘラクレスなど、ほかのヘラクレスオオカブトと同じ考え方で大丈夫です。リッキーだけの特別な飼育方法があるわけではないので、まずは温度管理の基本を押さえておきましょう。
成虫は22〜25℃、幼虫は20〜23℃、蛹は20〜22℃が目安です。幼虫期に25℃を超える環境が続くと、羽化が早まって小型になりやすいので、夏場はエアコンなどで一定に保つのが基本になります。成虫の寿命は6か月〜1年ほどで、当サイトの寿命の記事で紹介している値と同じです。温度管理の詳しいやり方はヘラクレスオオカブトの飼育に適した温度と管理方法を解説した記事をご覧ください。成虫から産卵、幼虫、蛹、羽化までの流れは、ヘラクレス飼育のまとめから各工程の記事をたどっていただけます。
リッキーの生息地は標高500〜2000mの山地なので、暑さに弱いのでは、と心配になる方もいるかもしれません。守るべき温度の目安はほかの亜種と共通ですから、変に身構えず、基本を丁寧に守るのが近道だと思います。

はじめてのヘラクレス飼育に、リッキーを選ぶのは全然アリだと思います。ヘラヘラと同じ手順で育てられて、情報もたくさん見つかる亜種ですから^^
まとめ
ヘラクレス・リッキーは、原名亜種のヘラクレス・ヘラクレスに次ぐ大型亜種で、アンデス山脈沿いの5か国に広く分布しています。ヘラヘラとの違いは、胸角が細くスラっとしていること、上翅の光沢が弱めで濁ったオリーブ色〜黄褐色に見えること、体毛が黄褐色であることなどです。飼育下では180mmを超える記録があり、ペアの価格は2015年時点で8,000円〜5万円程度とされています。
当サイトではそれぞれの飼育フェーズに合った情報を紹介しています。ぜひほかの記事もご覧になってみてください。
最後まで読んでいただき、お疲れさまでした。リッキーとの出会いがこれから始まる方にとって、この記事が少しでも迷いを減らす助けになったのなら、私も大変うれしいです。せっかくなら、大きく立派なリッキーを育てたいですもんね。





